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税金で困らない仮想通貨同士の取引方法の提案

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本稿では仮想通貨取引に関する利益のうち、仮想通貨同士の取引により生じた利益の簡便な算出方法について検討、整理を行う。なお、本稿は筆者の独自解釈を多分に含んでおり、国税庁、税務署等と解釈が異なる可能性があることに留意いただきたい。

1,従来議論されている仮想通貨取引のよる税金算出方法

仮想通貨による利益は個人の場合、雑所得として計上されることが2017年12月1日に国税庁から発表された。

 

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf 

 

これに関連して、仮想通貨の話題を扱う各サイトにおいて、下記のように解説記事が作成されている。

 

 

仮想通貨・ビットコインで得た収益の確定申告の方法 | 【Bitcoin Master】Bitcoinの基礎から最新情報まで!

 

www.enigma.co.jp

 

 

仮想通貨取引に関する税金算出は、まず仮想通貨による利益を算出し、給与所得や医療費控除等、他の所得や控除と併せて考慮することで、納税額(住民税と所得税)が決定される。後者は個々人の事情に左右されるため、通常の確定申告の解説サイトに近い内容となっている。一方、前者は国税庁の発表による解説が各サイトで行われており、概ね以下のような仮想通貨取引パターンを想定し、解説していることが多い。

 

  1. 「日本円→仮想通貨→日本円」の取引による利益(日本円と仮想通貨間取引)
  2. 「日本円→仮想通貨→商品」の取引による利益(仮想通貨による商品の購入)
  3. 「仮想通貨A→仮想通貨B→仮想通貨C(Aでも可)」の取引による利益(仮想通貨同士の取引)
  4. マイニングやICO参加による利益

 

これらの取引による利益は、利益確定した時点で税金算出の対象となり、確定をしていない含み益が生じている状態では対象とならない。この点は、外国為替取引による利益の算定方法と類似しており、国税庁の計算方法は妥当なものと言えよう。また、仮想通貨は雑所得と捉えられるため同一年内であれば損益通算できる。取引により損失が生じた場合は、他取引で発生した利益と合算した額を税金計算時の参照値とすることができる。損益通算の点は、各種ブログや5ch等で誤認されている例が多く見られるため注意されたい。

 

2,利益計算時の問題点

利益計算方法には課題が残っている。利益計算を行うには、購入時・売却時に仮想通貨を日本円に換算したレートの記録が必要となる。多くの取引所において取引履歴のエクスポートが可能なため、それらの取引履歴を基に、利益計算を一括して行うことが可能と一見思われるが、例外がある。仮想通貨同士の取引は、その取引時点での仮想通貨の日本円換算したレートが記録されないため、利益算出が困難となる。マイニングも同様で、マイニングした時点のレートを記録しておく必要があるが、このレートの記録方法について言及しているブログ記事は少ない。

 

3,仮想通貨同士の取引における簡便な利益算定方法

仮想通貨同士の取引のおける簡便な算定方法を提示する。ただし、この方法は以下に挙げる取引方法に制約が生じる。

 

  1. 日本円と取引により取得できる仮想通貨は、他の仮想通貨との取引による取得を行わないこと。
  2. 「1に該当しない仮想通貨」を用いて商品を購入しないこと。
  3. 「1に該当しない仮想通貨」を含んだ取引を行う際は、日本円から「1に該当する仮想通貨」への取引を行った後に、その分だけ「1に該当しない仮想通貨」への取引を行うこと。そして、利益確定する際はその逆順を辿り、日本円まで戻すこと。これらを各年12月31日までに行うこと。

 

この3項目について、筆者が利用している取引所bitbankにおける取引を例にして解説する。

まず2については、商品購入時点の日本円換算レートが必須事項となるので、行わないほうが好ましい。3について詳述する。

執筆時点、bitbankでは下記の取引を扱っている。(BCCビットコインキャッシュのことで、BCHと表記されることもある。)

 

 

ここから、bitbankによる取得可能な仮想通貨は以下のようになる。

 

 

このうち、日本円と直接取引ができる仮想通貨は、BTC・XRPMONABCCであり、MONABCCに関しては、BTCとの取引も可能だが、推奨しない。なぜなら、先述のように取引時点のBTC及び当該通貨の日本円レートの記録が困難なためである。

一方、LTC・ETHに関しては、日本円と取引ができず、BTCを介して取得することになる。これらの仮想通貨を含んだ取引を行う際に、先述の制約を設けたほうが好ましい。制約を設けた取引を行うことで、仮想通貨同士の取引行った際に日本円換算レートの記録が不要となる。なお、coincheck等の他取引所では、日本円で取引ができる通貨が存在するが、仮想通貨管理の簡便性を取って、本稿ではbitbankのみで取引を行った場合の取引方法について検討を行っている。

 

4,日本円換算レートの記録が不要な理由

日本円換算レートの記録が不要な理由について述べる。それは取引による利益が年内であれば損益通算できることに起因する。

例として、BTCを日本円により取得し、それによりETHを取得、ETH/BTCのレートが上昇し、ETHからBTC、日本円へと戻した場合について検討する。この場合では、(1)JPY→BTC、(2)BTC→ETH、(3)ETH→BTC、(4)BTC→JPYの4種類の取引が発生し、取引(2)〜(4)における利益計算を行う必要が本来存在する。(1),(4)のみの取引については、日本円換算レートが多くの取引所で記録されるため、取引(4)における利益計算上の問題は生じないが、(2),(3)を含む場合問題となる。しかし、(1)と(2)で扱うBTC量、(3)と(4)で扱うBTC量を同一にすることで、(3)と(4)で生じる損益が一連の取引に内包されるため、(1)でのBTC購入額と(4)でのBTC売却額の差分が取引(1)〜(4)の利益と計算することができる。

 

5,課題

課題は2点存在する。

一つ目は、既にBTCを持ってる際に、bitbankにおけるETHやLTC用のBTCを追加取得する場合、既存のBTCを含めて勘案した平均単価の算定を行うと、BTC/JPYの利益算出が複雑化する点である。利益計算のためには、取引ごとに移動平均法や総平均法等を用いて、所持している仮想通貨の平均単価の算出が必要となるが、ここに他の仮想通貨との取引を行うために暫定的に取得した分を含めて算出するのは困難である。この対処法として、単純なBTC/JPY用のBTCの平均単価と他の仮想通貨取引用のBTCの平均単価を分けて算出することが挙げられる。このためには、他の仮想通貨取引のためにいつBTC取引を行ったかを記録する必要がある。

二つ目は、理論上は利益額を算出できていても、税務署がなんらかの方法で取引履歴を参照して利益計算を行うことは、依然として不可能な点である。この問題はユーザー側からは対処することができないものと思われる。

 

6,類似事例

今回提案した取引方法は、他事例でも応用可能である。例えば、USDなど外貨を介した取引である。Binance等、海外の取引所はもちろん日本円を扱っていない取引所が多く、これらの取引所を用いた場合の利益計算を行う際には、今回の算出方法が有用と思われる。しかしながら、海外の取引所を用いた際の利益の算出方法は、仮想通貨以前に外貨を扱った投資一般でも事例がある可能性がある。今回は、国内の取引所を介した取引を想定しているが、海外の取引所を用いる場合は、その観点で情報を精査することが望まれるだろう。